綿
アオイ科ワタ属。1年生です。花が咲き、果実となり、やがて裂けます。これが実綿(コットンボール)です。コットンボールは花のように白い繊維を吹き出していますが、中に30粒ほどの種が付いていて、この種と綿繊維(リント)を機械ではがして使います。残った種には10mmにも満たない短い繊維(リンター)がまだ付いています。これも機械ではがしてキュプラ繊維の原料にします。種は絞って油をとり、食用油や石鹸にされます。さらにそのしぼりかすは飼料や肥料にされます。
綿はインド原産の2品種とペル−原産の品種とメキシコから中央アメリカあたりが原産のものとの4品種に分けられています。現在商業ベースで生産されているのは、次の3種類です。
長繊維綿
ペル−綿の系統で、繊維長が38mmもある高級な品種です。
エジプト綿(ギザ45、ギザ70)、ス−ダン綿(VS、バカラット)ペル−綿(ピマ)、インド綿(DC32、スピン)アメリカ産ス−ピマ綿、中国産トルファン綿、海島綿(シーアイランドコットン)、などです。
シルクのような風合です。
中繊維綿
世界の生産量の90%はこの種類で占められ、もっとも一般的かつ用途の拾い品種です。
アップランド綿といわれるメキシコ綿の系統のアメリカで改良された繊維長28mmくらいまでの綿がいちばん多く使われています。オ−ストラリア綿など。
短繊維綿
インド・パキスタン系のデシ綿といわれる繊維長21mm以下の綿で、もっとも安い品種です。
太い糸をつくり、ネルやキャンバスに少量使われていますが、大部分はふとん綿、中入れ綿、衛生材料に使われます。
綿の長所
肌触りが柔らかい 丈夫で水に濡れるとかえって強くなる 吸湿性が大きい アルカリに強く、洗濯や漂白がしやすい 熱に強く、高い温度でアイロンがかけられる 天然繊維の中でもっとも安い 染色性がよい 虫の害がない。
綿の短所
しわになりやすい 型くずれしやすい 洗濯したとき縮むことがある 直射日光に長時間当てると黄変し弱くなる かびが付きやすい 燃えやすい。
綿のような短繊維の紡績は、繊維の端が糸の表面から出やすく、それが毛羽になります。また、綿繊維の先端は麻や毛と比べて柔らかいので、それが最終製品になったときのやわらかさや暖かみといった綿独特の風合をつくり出します。
しかし、織り編み工程では、生産の高速化により、毛羽の少ない糸が要求されます。特に毛羽のむらや極端に飛び出した長い毛羽は、ピリングや染めむらの原因になります。
毛羽を少なくすると、糸の光沢が増します。それには繊維の長い綿花を使い、短い繊維をくしけずって除去するコーマという工程を通します。
これがコ−マ糸で、強力、均斉度、光沢が増します。これに対してコーマを通さないで紡績した糸をカ−ド糸といいます。
さらに、糸の表面の毛羽を取るため、ガス焼きという工程をほどこすことがあります。これは、綿糸をガスの炎の中を高速で通過させます。麻の糸にも使われ、光沢、張力が増します。
また、綿糸を引っ張って苛性ソーダ液で処理をすると、光沢、強度、水による縮率を下げ、染色の発色がよくなります。これをシルケット加工(merserized)といい、特に、黒色は加工のない糸は墨黒のようになり、加工をしたものはしっかりした黒になります。
糸でシルケットしたものを糸ジル、反物でシルケットしたものを反ジルといい、両方ともほどこしたものをWシルと言っています。ガス焼きとシルケットを共にほどこしたものは、ガスシルといいます。
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