合成繊維はそれぞれ原料分子は違うものの、すべて合成高分子(合成ポリマー)からできています。
簡単な分子(モノマー)が互いに手をつないで、数百から何万とつながると、始めの分子ではとても考えられない性質の物質(ポリマー)になります。このように、分子(モノマー)をつなぎ合わせることを重合といい、分子のつながった数を重合度といいます。
繊維にできるのは限られたポリマーです。細長く引っ張って伸びることや、できた細い糸が柔らかく、強く、繊維としての性能を持っていなければなりません。ナイロン、ポリエステル、アクリル、ビニロン、ポリウレタンなどです。

ポリエステル

いったんポリエステルポリマーを作ってから、熱で融かして紡糸口金の小さな孔から押し出し引っ張って糸にします。(溶融紡糸)
繊維に適度な張り、腰があり、短繊維は綿や羊毛ににています。また、長繊維は絹の風合に近く、繊維の太さや断面形状を変えたり、後の減量加工で風合を自由に調節できます。
適当な強さ、伸び、しなやかさがあり、しわになりにくく、光り(紫外線)にさらされても弱くなりません。熱に強く、長繊維の嵩高加工が容易です。熱セット性がよいという特長があります。溶融紡糸で丸断面以外に、異型断面、極細繊維、複合繊維など、特殊な形態の繊維を比較的つくりやすい繊維です。また、反物にして苛性ソーダで繊維の表面を少し溶かす(減量加工)と繊維が細くなり風合が柔らかくなります。ただ、100℃以上で染めなければならないという特殊性もあります。非常にコストが安く、1Lあたり¥100以下です。

エチレン

エチレングリコール

石油

パラキシレン

酸化

テレフタル酸

重合

ポリエステルポリマー

ポリエステルポリマーをつくってから溶融紡糸

 
   
 

溶融紡糸
巻取った後
延伸

ポリエステル
フィラメント

溶融紡糸
延伸して、捲縮した後
切断

ポリエステル
ステープル

 

ポリエステルフィラメントの製造工程

ポリエステルステープルの製造工程

  
   

三葉断面

五葉断面

中空
減量加工

 

ポリエステルの断面

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ナイロン

ナイロンのポリマーにはナイロン6とナイロン66があり、それぞれ元の原料が違います。
溶融紡糸で、長繊維が主体です。繊維の特長としては強く、特に摩擦に強い特徴があります。伸びがあり、柔らかい。染色しやすく、色が美しく出ます。反応性に富んでいるので、薬品による後加工がしやすいという性質もあります。熱セットができて、嵩高加工に適しています。原料コストがやや高いのが難点です。長期間おくと黄変します。
紡毛糸を作る時に、毛に15%ほどのナイロンを混ぜて紡績することがよくおこなわれますが、これはナイロンが柔らかく、丈夫で毛と同じ染料で染めることができるためです。

石油

シクロヘキサン

εカプロラクタム

重合

ナイロン6ポリマー

 

ナイロン6の製造工程

 

石油

アジビン酸

重合

ヘキサメチレンジアミン

ナイロン66ポリマー

 

ナイロン66の製造工程

 
    

溶融紡糸
巻取った後
延伸

ナイロン
フィラメント

溶融紡糸
延伸して、捲縮した後
切断

ナイロン
ステープル

 

ナイロンフィラメントの製造工程

ナイロンステープルの製造工程

 

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アクリル

アクリルのポリマーは熱で融けません。融けても分解してしまうので、溶融紡糸ができず、溶剤にポリマーを溶かして紡糸します。この溶剤が各社それぞれ違って特徴があり、また繊維の性能を良くし、染色性を向上するためにアクリルポリマーに少量の化学成分(共重合原料)を一緒にくっつけますが、この化学成分も各社それぞれ違います。
特徴としては、風合が羊毛によく似ています。染色が容易で、発色が美しく(カチオン染料で、他の繊維はカチオン染料で染まらない)、短繊維が主体で紡績しやすい繊維です。量産しやすく、コストも安くあがります。熱セット性はありません。80℃前後で柔らかくなります。ピリングが起こりやすいですが、抗ピルタイプのアクリルも開発されています。

 

アクリルの製造工程

石油

プロピレン

アンモニア

アクリル
ニトリル

アクリル
ニトリル
共重合打物

共重合
原料

共重合

溶剤

溶解

 
 

乾式紡糸

湿式紡糸

アクリルの紡糸工程
延伸、熱処理後、他の合成繊維同様にフィラメント、ステープルにする

アクリルの80℃で柔らかくなる性質を利用してハイバルキー糸をつくることができます。
100〜120℃でセットしたアクリル繊維を80〜90℃で20〜30%引き伸ばしておいて、引き伸ばしていない繊維をミックスして紡績し糸にして、次に100〜120℃の熱を加えると、引き伸ばされたアクリル繊維はセットされた形状を思い出して元に戻ります。1本の糸の中で、元に戻って縮む繊維は中に入り、縮まない繊維が外に浮き出てふくらみのある糸ができます。これがハイバルキー糸です。これはニットに適した良い風合の糸です。

ハイバルキ−糸

100〜120度で
セット

80〜90度で
20〜30%
引き伸ばす

引き伸ばした状態で
何もしない繊維と
ミックスして紡績し、
糸にする

100〜120度の熱を加えると、
引き伸ばされた繊維は
元の形状に戻る

 

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ポリウレタン

ポリウレタン系弾性繊維(スパンデックス)は1937年にドイツで発明されたウレタン系(非弾性)繊維製造技術が基になっています。
石油化学から作られる数種類の化学品を反応させて、長い線上でしかも中に屈曲しやすい部分を持つポリマーからできています。ゴム紐よりも柔らかく、よく伸びます(5〜7倍)。伸びてもまたよく縮み、縮む力も適当です。ゴムより熱に強く、ゴムのようにはやく老化しませんが、5年くらいで劣化します。また、塩素の作用で黄変したり、劣化を促進したりします。染色できる点や、ゴムでは不可能な非常に細い糸が自由に作れるのは非常に便利です。
使用するときは、必ず、他の糸と一緒に使用します。
またポリウレタンを裸で、他の糸と一緒に編み込むことをベアヤ−ン使いといいます。ベア天とは、ベアヤ−ン使いで丸編機にかけた天竺編物です。

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